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JESAコラム 第57回


火力発電と燃料電池との組み合わせによる高効率化

元東京電機大学 西川尚男

我が国の電力供給は原子力発電に大きく依存していたが、2011年3月11日の東電福島原子力発電所の大事故以来、原子力発電はほぼゼロとなり、それを補うため図1に示すように火力発電が全体の発電量の88%を占めるに至っている。

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図1 日本の一般電気事業用電源発電量の推移

一方政府は2015年11月に開催されたパリでのCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締結国会議)に、2030年までに我が国の温室効果ガス排出量を2013年比で26%削減する目標を掲げ、その根拠として図2に示す電源構成とすることを約束した。目玉は原子力発電の構成を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%と、石炭・天然ガス・石油に基づく発電の割合を大きく低減させ、CO2の排出量を大幅に削減しようとするものである。

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図2 2030年の我が国の電源構成

火力発電部門では、使用する燃料によって図3に示すようにCO2排出量が異なる。石炭利用による排出量を100%とすると、同一熱量の比較では石油は80%、天然ガスは60%となり、石炭から天然ガスへ燃料を切り替えことでCO2排出量は大きく削減できる。一方発電システムによっても大きく低減できる。

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図3 石炭、石油、天然ガスからの単位熱量当たりのCO2、NOx、SOxの排出比較(石炭の排出量を100%)

以下現在使用の火力発電および将来期待される発電システムについてCO2排出量削減に寄与する発電効率を中心に紹介する。

蒸気タービン発電:蒸気タービン発電はボイラーで燃焼してできた高温のガスで熱交換器により加圧した水を高温・高圧蒸気に変換させ、これを蒸気タービンへ導き、発電するものである。我が国の蒸気タービン発電の主役である石炭火力発電の変遷を図4に示す。蒸気温度と蒸気圧力を高めることにより高効率化が可能となる。既に蒸気温度610℃、蒸気圧力25MPaのプラントで熱効率42%に達し、蒸気温度800℃、圧力38.5MPaで熱効率49%となることを目標に、着々と次の開発が進められている。

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図4 我が国の石炭火力発電所の蒸気条件の変遷

ガスタービン発電:燃焼ガスをタービンに吹き付けて駆動する発電方式である。具体的には図5に示すようにガスタービンに直結した圧縮機で外気から空気を取り入れ、圧縮機で高圧化し、燃焼器に導いて高温・高圧のガスを発生させ、ガスタービンへ供給してタービンを駆動するものである。ガスタービン単体では熱効率が36%と小さいが、短時間で起動・停止が可能なため、電力系統の負荷変動用として適用されている。

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図5 ガスタービン発電の基本構成

コンバインドサイクル発電:図6に示すように上記に示したガスタービンを利用して、その入り口温度を1100~1500℃にしてガスタービンを駆動し、ガスタービンの出口排ガス温度500~600℃の熱エネルギーを排熱回収ボイラーに導いて、そこで得られた高温蒸気を蒸気タービンに導いて、発電する。このコンバインドサイクル発電の熱効率変遷を図7に示す。現在熱効率59%を達成している。

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図6 コンバインドサイクル発電
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図7 コンバインドサイクル発電の変遷

燃料電池とコンバインドサイクル発電との組み合わせによるシステム:更に高効率化を目指した発電システムを図8に示す。作動温度が1000℃の固体酸化物形燃料電池を上段に設置し、その排ガスを燃焼器を使って1600℃まで高温化し、ガスタービンへ供給し、その排ガスを利用して蒸気タービンを作動させることにより、熱効率70%の達成が可能となる。これは開発中の小型200kWクラスで固体酸化物形燃料電池とマイクロガスタービンとの組み合わせによる検証試験を実施し、その成果をもとに求められた結果である。

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図8 トリプルコンバインドサイクルシステム

電力会社の火力発電部門では上記のようにCO2排出量を低減するため、着々と高効率化を目指した開発が進められている。今後はその成果を広く海外へ普及させることが地球温暖化抑制に欠かせない。


2017/06/12