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JESAコラム 第56回


FITの限界を超える再エネ開発とは

国内の再エネの導入拡大を牽引してきたFIT法が改訂され、今後の再エネ拡大に黄色信号がともっている。 再エネ開発を世界に先駆けてスタートした日本では、FIT導入以前の21世紀初頭までは、 太陽光発電や風力発電などの再エネ開発は世界の先頭を走り続けていたはずだったが、FITに先駆けて導入されたRPS制度の失敗により、 日本の再エネ開発はその普及面で大幅な遅れを喫することとなってしまった。RPS法は、 電力会社に再エネ電力の買い取り義務を負わせることで再エネ導入拡大を確実に目指すはずだったのだが、 導入目標の下限を買い取り義務として設定したために、最低限だったはずの義務量が目標化してしまい、 「RPS法は再エネ抑制法ではないのか」と揶揄される結果となってしまった。その主な原因は、 再エネ電源のコスト問題にあったのは事実だといえようが、系統網を独占的に運営し、 他者電源の接続をかたくなに拒み続けることが許されていた地域独占型の電力政策にあったということは、 新エネ開発に携わってきた誰もが認めるところであろう。

自由化以前の電力会社は、需要を満たすだけの発電所を自力で確保し、必要な電力を需要家に安定的に届ける義務を負ってきた。 こうした体制の中で、電力会社は自社電源以外の電力を送電線に受け入れることには極めて消極的あった。他者電力の受け入れは、 系統を運営する立場からは迷惑なだけだということである。例えば、鉄道会社でも、自ら敷いた鉄路には他社の車両を原則としては走らせたりはしない。 一部で相互乗り入れの仕組みはあるものの、それはあくまでも自社の計画の中で受け入れられる場合だけである。 一方で、高速道路はどうかというと、基本的には誰でもが自由に乗り降りすることが許されている。 独占供給時代の電力ネットワークと自由化後の電力ネットワークを鉄道と高速道路に分けて考えるとわかりやすいかも知れない。
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電力自由化後、電力事業は発電、送配電、小売りの3事業に分割され、電力会社の独占権は形式的には取り除かれることになった。 しかしながら、この5年間、日本の再エネ開発を牽引してきたFIT法が改正され、太陽光発電などについては、 系統接続の制限がさらに強化されることになってしまった。電力会社に系統接続義務を課すことで、 爆発的に導入量を拡大させたFIT法であったが、やはり系統接続の問題によって、さらなる再エネ拡大の限界が示されたことになった。

系統電力として再エネ導入が示されてしまった今、さらなる再エネ開発は、 電力系統に頼らない自家発電など独立型の再エネ利用モデルを開発できるかという新たなステージを迎えたといって良い。 その中心として期待されているものは、地産地消型の小規模な分散型ネットワークではないかと考えられている。

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2017/05/29