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JESAコラム 第42回


電力自由化と分散型発電 その2

省エネルギーの二面性
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省エネルギーには二つの側面があるのをご存じだろうか。一般的に省エネルギーというと、使用するエネルギーの量を減じることだと理解されている。つまり需要面での省エネである。部屋の中の照明をこまめに消したり、空調機器の温度設定を控えめにして節電したりする。また、家電製品などを省エネタイプの最新モデルにしたり、照明器具をLED照明に代えたりして節電効果を上げる。省エネは、各家庭や事業所での電力使用量を削減することで電気料金の低減に繋がることに加えて、電力会社の発電量が削減でき、発電によるCO2排出量の削減ができる。

政府は、夏の省エネ、冬の省エネの基準を毎年発表して、冷暖房の温度などの目安を示して国を挙げての省エネを推進している。こうした消費するエネルギーを削減するという省エネは、時には目標達成のために我慢を強いられるという側面もあり、なんとなく「欲しがりません勝つまでは」という、どこかで聞いたような昔の標語を思い出させたりもする。
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省エネには、もう一つの考え方がある。それは供給面でエネルギーの利用効率を上げるという省エネで、発電所の発電機の効率を上げることや、それまで利用することなくムダに捨てられていた排熱などのエネルギーを回収して再利用したりすることである。需要サイドの省エネが無駄を省いて使用するエネルギー量を削減するというのに対して、供給サイドの省エネは、使用する1次エネルギーの絶対量を減らしながら、それまでと同等の、あるいはそれを上回る電気や熱エネルギーを供給するという考え方。それまでと同等の1次エネルギーを使用しながら、それまで以上の2次エネルギーを供給することができる。つまり、利用効率を上げることで、1次エネルギーの使用量を削減するというものである。例えば、火力発電所の発電効率を上げれば、石炭や天然ガスなど1次エネルギーの使用量が削減できる。工場や事業場には電気と熱を同時に供給できるコージェネレーションシステムを導入すれば、系統電力の使用量が削減できるし、熱を供給するボイラーの使用燃料が削減できる。

コージェネは、電気と熱を同時に作り出すことで、1次エネルギーの80%以上を電気や熱として利用することができる。火力発電所の発電効率が40~50%程度であることを考えると、いかに1次エネルギーを無駄なく利用できるのかが分かる。また、都市排熱や工場などの事業場で利用されることなく捨てられてしまっている低温排熱なども、こまめに回収して発電用の熱源として利用することで系統電力への依存度が減ぜられ、省エネや創エネに寄与できる。

以上のように考えると、省エネをより効果的に進めるためには、もちろんエネルギーの無駄を徹底的に省くという需要サイドの省エネも重要だが、供給サイドの省エネがとても重要だということがわかる。

エネルギーの使用量を削減するという省エネ、エネルギーを効率よく利用するという省エネ。どちらも同様の効果が得られるのだとすると、快適性を損なうことなく事業活動に必要なエネルギーを必要なだけ遠慮無く使用できる供給サイドの省エネの方がより価値のある省エネだと思われるのだが、残念ながら需要サイドの省エネに比べて取り組みは遅れてしまっているという現状がある。省エネの核心はエネルギーの利用効率を上げることにあるという側面から、省エネ活動が広がっていくことにもっと注目してみたい。

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2016/10/24