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JESAコラム 第53回 FIT制度の変節と再エネ拡大の可能性


2012年の制度開始以来、再生可能エネルギー導入拡大に大きく貢献したFIT(固定価格買取制度)がこの4月1日から衣替えして新たにスタートした。最も大きな変更点は「増えすぎて」制御の効かなくなった太陽光発電の導入量を抑制することにあり、無制限に買い取ることを原則としてきたこれまでの制度を改めて、電力送配電網(系統)が許容できる範囲でしか買い取らなくてもよいこととして電力会社(送配電事業者)の買い取り義務を一部解除したことだ。
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これまでは、出力変動の大きい太陽光や風力について、電力需要が少ない時期に系統制御が困難な場合には、出力制御(発電しても系統に引き取らない)という方法を認めてきていたが、4月からは一定規模以上の太陽光発電については入札によって連系出来る案件を決めることにした。これまでは発電電力の全てを電力会社に買い取らせることを原則としていたものを、買い取り枠をあらかじめ電力会社(送配電事業者)が設定することができることとし、さらに買い取り価格も入札によって決められるということにされたのである。これにより新規の太陽光発電の事業計画が困難になると考えられている。

4月からの主な改訂点は、旧制度で認定を取得している場合、①設備認定を取得済の案件であっても3月31日までに電力会社との接続契約を締結できなかったものは、原則として認定を失効させる②電力会社との接続契約を締結した場合でも、現在運転している設備も含めて、電源や出力規模に関わらず(10kW未満の住宅用太陽光発電設備を含む)、9月30日までに事業計画の提出が必要で、未提出の場合は失効扱いになる。また、新制度で申請する場合は①2千kW以上の太陽光発電には入札制度を導入②旧制度では「設備認定」していたものを新制度では「事業計画」の認定に改め、系統連系の同意を得られていることを認定条件とするほか、メンテナンスの実施や関係法令の遵守等を求める③買い取り義務者が一般電力事業者から送配電事業者に変更された。

次世代エネルギーとして利用拡大が進む再生可能エネルギーであるが、FIT導入5年を経て大きな曲がり角を迎えたことになる。これまで、再生可能エネルギーによる電力の全てを発電コストに配慮した価格で買い取って系統電力として利用を義務づけることで、想定を上回るスピードで拡大してきた再生可能エネルギーは、今後、その大部分を占めてきた太陽光発電を中心に導入拡大のスピードが大きく抑制されることになるのは避けられない。

新制度への切替によってこれ以上の再エネ拡大が期待できなくなったのだとすると、例えば系統連系しない自家消費や地産地消型の再エネ発電の奨励等々、FITに代わる新たな再エネ拡大策、検討も必要になってくるのではないかと思われる。

<高>


2017/04/05